一匹のカエルが言った。
「俺の大好物はなんといってもハエだ。あの香ばしさがなんともいえない」
もう一匹のカエルは言った。
「おいらはなんといってもミミズだ。あのジャリジャリ感と土臭さがたまんねぇ」
宇宙に無数にある星たち。
その中には生命体が住む星がたくさんある。
大昔、こんなことがあった。
ハエ星人が地球を観察に来てこう言った。
「なかなかいい環境だ。将来ここを別荘地にしよう」
そうして、ハエ星人は自分たちのミニチュアを、地球の観察のために配置した。
それが、今、人間をわずらわせるハエとよばれている生き物だ。
地球がいい環境というのは、その他の星人たちに知れ渡った。
そしてハエ星人とおなじように自分たちのミニチュアを地球に置いていった。
つまり、地球上の虫という虫はすべて、宇宙人と生態を同じにするミニチュアだ。
ハエ星人が、地球を映し出すモニターを観ている。
なんとカエルに自分達のミニチュアが食べられている。
怒りに燃えたハエ星人は、地球にやってきて、
ハエが大好物なカエルをことごとく殺戮した。
ハエを食べないカエルは難を逃れることが出来たが、
ミミズが好物なカエルはミミズ星人にいずれ殺されるだろう。
さて、ここはカエル星の地球観察モニター室。
ハエ星人の振る舞いをつぶさに観ていた怒りに震えるカエル星人は、
地球に報復にやってきて、ハエというハエを殺した。
次はそれを観ていたハエ星人の番だ。
ハエやカエルやミミズだけではない。
クモもムカデもカマキリもゴキブリも殺戮し合った。
地球に住むミニチュア星人は死んでも死んでも補充されるので、
これらの戦いは果てしなく続いている。
ある日、ハエ星人がミニチュアゴキブリを襲撃した。
ゴキブリは次々に殺され、最後の1匹になり、ハエ星人に怒りをぶちまけた。
わしの仲間は地球でいちばん殺されている。
中でも人間というやつらはわしらを忌み嫌い、みつけたら殺そうとする。
他のやつらはわしらを食べるために、つまり生きるために殺すが、
人間は汚い怖い嫌いという理由だけで、わしらを殺そうとする。
プシューしたり、ネバネバホイホイしたり、バシッペシャにしたり、
残酷極まりないやりかたで、わしらの息の根を止めにかかる。
ハエ星人よ、お前たちのミニチュアもさんざん人間に殺されたではないか。
なのになぜ最初に人間どもを殺そうとしないんだ!
ゴキブリの最後の1匹を殺したハエ星人が言った。
「バカめ、いちばんのごちそうは、最後に、ゆっくりと、味わってじゃ」