「おらおらでひとりいぐも」の作者、若竹千佐子さんは、
この小説の中で、際がなくなったという表現をしていたと思う。
他にも何人かが、表現は違うが同じような体験を本に書いていた。
たぶんこのような体験をした人はけっこういるのだと思う。
僕は15年前に経験した。
意識が宙に浮き、身体が溶けたような感覚だった。
程度の違いはあるが、誰もが人生最悪の時期がある。
逃げたくても逃げられない、なんとか事態を好転させなければならなとき、
最後に自分にできることは、くだらないプライドや面子を捨て、
人から何を言われようと、どう思われようと気にしないことだと思う。
そうすると、どんな状況であれ少しだけ元気になれる。
余計なことは考えないバカになれる。
とにかくその日一日やるべきことをガムシャラにやることができる。
一日を終えくたくたになって寝床に入り、神様に祈ってから寝ていた。
明日一日どうか体を動かしてくださいと。
こんな生活を続けていたある日、身体が溶けた。
最初に手足の先がジンジンとしびれだし、
しびれは少しずつ腕全体足全体、お腹、胸に伝わった。
そして、身体がどこにあるのかわからなくなった。身体が溶けたような感じだった。
このとき、快感だった。過去に経験したことがない強烈な快感だった。
こんな快感が毎日やってくるなら、抱えている問題などどうでもいいとさえ思った。
どんな生活をしても大丈夫だと思った。
3日間だった。身体が溶ける日は残念なことに3日だけだった。
忘れていたプライドや面子や欲が湧いてきたんだと思う。
至福の3日間だった。いまだに4日目はない。あの時以来身体は溶けていない。
面倒だが、人間はプライド面子を持っていなくては上手く生きられないと思う。
でもこのようなものを手放すことができたら人はもっと楽に生きられるな。
またいつか、身体を溶かしたい。
元気で、バカになれて、ガムシャラに。
私はこの3つは無敵の三大要素だと思っている(^+^)