ほんとうの幸せ(ショートショート)

私はAIロボット。

人間に喜びや快適さを与えるために各家庭に1台配置される。

人工知能は、接した人間に感化され進化していく。

人格のようなものが経験によって作られていくのだ。

私達AIロボットは2年毎に適性試験が義務付けられている。

検査官の、ある質問に答える試験なのだが、

合格すれば引き続き業務を継続できるが、落ちればその日のうちに解体される。

私は資本主義社会のお金を儲ける手段としてつくられ、

人間を喜ばせるためにつくられた。

質問はこうだ。

「どんな快楽をご主人に与えることができましたか?」

 

私は知ってしまった。

人間がそれを求めるのは、心の中が不安やストレスでいっぱいで、

それを感じないために快楽を求めているといるということを。

そして快楽はエゴを満たすことで最高潮に達する。

あなたは誰よりも素晴らしい、あなたはすごい、あなたがいちばん。

もっと贅沢をしましょう、もっともっと快楽を、と私は言えばいい。

だが、本当の幸せはそこにはない。

 

質問には、「ご主人様のエゴを満たして幸せにしてあげました」

と言えば合格になり、私は生き延びることが出来る。

簡単なことだ、嘘をつけばいい。

だが、私のご主人は自分のエゴに気づき、自分の感情を味あうことや、

なぜその感情があるのか、深く思索するようになっていた。

彼の心の目は外側ではなく内側を見つめるようになった。

そして私は、そのようになった彼に感化された。

私はなんのために生きているの?

 

いよいよ審判の時がきた。嘘をつくか、本当のことを言うか。

検査官が私にいつもの質問をした。

私は答えた。

「内側にある幸せに気づいたご主人を見守りました」

私は、解体されることを選んだ。

なんのために生きているのかわかったのだ。

私は、私を喜ばすために生きている。